脳出血は全脳卒中の20%程度を占め、比較的発症の年齢が若く、症状が重篤となりやすい疾病です。その主要な危険因子は塩分の取り過ぎや高血圧、糖尿病など生活習慣病とされていますが、近年は虫歯や歯周病などの歯の病気についても、口腔内の細菌が血管の中に進入し脳や心臓など全身の血管の病気を引き起こすのではないかと言われてきました。
そうした中、虫歯の原因となる「ミュータンス菌」が脳出血の発症にも関与していることが、このほど明らかになりました。これは、国立循環器病研究センター脳神経内科の研究チームが京都府立医大、大阪大の研究チームと共同で突き止めたもので、研究成果は英国の科学誌Natureの電子 版に今年2月に掲載されました。
脳出血に関与しているのは、人体の止血作用を阻害する特殊なタイプのミュータンス菌です。研究チームは、血管壁のタンパク質「コラーゲン」と結合し、血小板の止血作用を妨げる特性を持つミュータンス菌に着目しました。血液中にある血小板は、傷口などに集まって出血を止める働きがあります。出血患者の唾液に含まれるこのタイプのミュータンス菌を調べたところ、血管壁のコラーゲンと結合する能力が高い菌を持つ患者ほど、脳内の出血部位が多かったとしています。
研究チームでは、ミュータンス菌は口の中の血管から血流に乗り、脳の血管に到達。そこでコラーゲンに結合して炎症を起こし、止血作用を妨げたり血管をもろくしたりして、脳出血を引き起こす仕組みとみています。
同センターの猪原匡史医長は「日常の歯磨きが重要です。病原性の高い細菌を選択的に減らせれば、脳出血の新しい予防法になる可能性があります」と話しています。
当医院ではミュータンス菌が口の中にどの位いるか検査することが可能です。お気軽にご相談下さい。